当期(2024年4月1日~2025年3月31日)のわが国経済は、雇用・所得環境の改善が続く中、景気については一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復しています。
航空業界を取り巻く環境は、ウクライナや中東地域情勢等の地政学リスクが懸念されるものの、旅客需要は回復基調が続いています。
このような社会・経済情勢の下、航空事業を中心に増収となったことから、売上高は2兆2,618億円(前期比10.0%増)となりましたが、運航規模の拡大に伴う整備機会の増加や人財への投資を進めたこと等から費用が増加し、営業利益は1,966億円(前期比5.4%減)となり、前期と比べて減益となりました。また、航空機等に関わる各種補償金を計上したこと等から、経常利益は2,000億円(同3.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,530億円(同2.6%減)となりました。
なお、従業員の健康をサポートする取り組み等が評価され、3年連続で「健康経営銘柄」に選定されたほか、当社は世界の代表的な社会的責任投資の指標である「Dow Jones Best-in-Class World Index」(本年2月に「Dow Jones Sustainability World Index」から名称変更)の構成銘柄に8年連続で選ばれるとともに、国際的な環境評価を手掛ける非営利団体であるCDPより、最高評価の「Aリスト企業」に3年連続で選定されました。今後も人的資本経営を強化しつつ、事業を通じて環境問題等の社会課題解決に取り組み、持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。
セグメント
航空事業
旺盛な訪日需要とレジャー需要に支えられ、国際線旅客・国内線旅客ともに好調に推移し、売上高は前期を上回り2兆587億円(前期比10.1%増)となりました。費用面では整備費や人件費等を中心に増加したことから、営業利益は1,991億円(前期比4.3%減)となり、前期と比べて減益となりました。
なお、当社グループは英国SKYTRAX社から顧客満足度で最高評価となる「5スター」に12年連続で認定されました。また、米国の非営利団体APEXから高品質なサービスの提供が評価され、最高評価となる「WORLD CLASS」を初受賞し、米国のAir Transport World誌からは優れた業績と先進的なサービスが評価され、「2025 Airline of the Year Award」を受賞しました。
国際線旅客
国際線旅客では、好調な訪日需要に加え、日本発レジャー需要やビジネス需要を積極的に取り込み、北米路線・欧州路線が好調に推移したこと等により、旅客数、収入ともに前期を上回りました。
路線ネットワークでは、12月から羽田=ミラノ線、本年1月から羽田=ストックホルム線、本年2月から羽田=イスタンブール線を新規開設したほか、8月から羽田=ウィーン線、10月から成田=パース線を再開しました。
営業・サービス面では、国際線ファーストクラスやビジネスクラスの軽食メニューとして、「ANAオリジナルラーメン」の提供を開始したことに加え、機内インターネットやエンターテインメントのサービス拡充に努めました。
以上の結果、当期の国際線旅客数は807万人(前期比13.1%増)となり、収入は8,055億円(同10.6%増)となりました。
国内線旅客
国内線旅客では、「ANA SUPER VALUEセール」を継続的に実施し、レジャー需要の喚起に努めるとともに、運賃を一部改定したこと等により、旅客数、収入ともに前期を上回りました。
路線ネットワークでは、12月から羽田=能登線を1日2往復に復便したほか、夏休み期間や年末年始期間を中心に臨時便を設定し、レジャー需要を取り込みました。
営業・サービス面では、12月から2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)を記念した特別デザイン機「EXPO2025 ANA JET」の運航を開始したほか、羽田空港のANA LOUNGE内にキッズルーム「ANA ポケモン Kids TV ラウンジ」をオープンしました。また、羽田空港や伊丹空港等に続き、福岡空港において最新型保安検査機(スマートレーン)を導入し、手荷物検査場の混雑緩和に努めたほか、プレミアムメンバーのお客様の利便性向上を目的に、羽田空港のプレミアムチェックインカウンターをリニューアルしました。
以上の結果、当期の国内線旅客数は4,405万人(前期比8.1%増)となり、収入は7,039億円(同9.2%増)となりました。
国際線貨物
国際線貨物では、アジア・中国発北米向け三国間貨物の旺盛な需要を取り込んだことに加えて、自動車関連を中心とした日本発の需要が緩やかに回復したこと等により、輸送重量・収入ともに前期を上回りました。
路線ネットワークでは、需要動向を見極め、貨物専用機の運航路線や供給量を柔軟に調整したほか、8月から他社によるエアラインチャーター便を運航する等、収益性の確保に努めました。
成田空港では、10月から新たな貨物施設の供用を開始しました。施設の集約や無人搬送車の導入による作業の効率化に加え、温度管理施設の拡充等による品質向上に取り組みました。また、12月に日本の航空会社として初めて国際航空運送協会(IATA)が策定したリチウム電池輸送における国際品質認証を取得しました。今後、需要が拡大するリチウム電池を安全かつ高品質で輸送できる体制を構築し、お客様のニーズに応えていきます。
以上の結果、当期の国際線貨物輸送重量は704千トン(前期比3.6%増)となり、収入は1,873億円(同20.5%増)となりました。
Peach・AirJapan
Peach
AirJapan
Peachでは、旺盛な訪日需要を取り込むため、使用する機材をはじめリソースを国際線へ重点的に振り分けたこと等から、国内線の旅客数は前期から減少したものの、国際線の拡大が寄与したことにより収入は前期を上回りました。
路線ネットワークでは、12月から新たに関西=シンガポール線を開設したほか、需要動向に応じて、通期で臨時便を設定しました。
営業・サービス面では、国内・海外の旅行パッケージ商品「Peach Travel」によってレジャー需要の喚起に努めました。また、12月から機内誌を刷新したことに加え、機内食の種類を増やし、一部の国際線で温かいメニューを再開する等、お客様へのサービスの充実を図りました。
以上の結果、当期のPeach旅客数は910万人(前期比2.6%減)となり、収入は1,393億円(同0.9%増)となりました。
昨年2月に新たなブランドとして誕生したAirJapanでは、成田=バンコク線、成田=仁川線、成田=シンガポール線を運航しています。
営業・サービス面では、訪日旅客に加えて日本発旅客に対する需要喚起を目的に、「AirJapanサマーセール」等を実施したほか、航空券の支払い方法として、日本ならびに就航国であるタイ・韓国において2次元バーコード決済を開始しました。
以上の結果、当期のAirJapan旅客数は42万人(前年実績4万人)となり、収入は117億円(同12億円)となりました。
その他
航空事業におけるその他の収入は1,803億円(前期比5.2%増)となりました。なお、航空事業におけるその他には、マイレージ附帯収入、機内販売収入、整備受託収入等が含まれています。
航空関連事業
外国航空会社の復便や新規就航に伴い、空港地上支援業務や機内食関連業務の受託が増加したほか、国際貨物の取扱高が拡大したこと等により、売上高は3,372億円(前期比12.9%増)となり、前期を上回ったものの、システム関連費用が増加したこと等から、営業利益は40億円(同40.4%減)となりました。
旅行事業
海外旅行については、ダイナミックパッケージ商品がハワイ方面を中心に好調に推移したことに加え、新規就航都市をはじめとするヨーロッパ方面の需要を順調に取り込んだこと等により、売上高は前期を上回りました。国内旅行については、主力のダイナミックパッケージ商品の集客が伸び悩んだこと等から、売上高は前期を下回りました。
以上の結果、当期の旅行事業における売上高は735億円(前期比6.3%減)、営業利益は1億円(同85.9%減)となりました。
また、モバイルペイメントサービス「ANA Pay」の会員数が11月に100万人を突破しました。本年1月には「ANA Pay」の機能改善を実施し、日常生活で少額のマイルを使いやすくする等、お客様の利便性向上に努めました。
商社事業
訪日旅客と国内旅客需要の増加に伴い、免税店「ANA DUTY FREE SHOP」、空港物販店「ANA FESTA」や観光土産品卸売「FUJISEY」が好調に推移したこと等により売上高は前期を上回ったものの、人件費が増加したこと等から、営業利益は前期を僅かに下回りました。
以上の結果、当期の商社事業における売上高は1,299億円(前期比10.2%増)、営業利益は45億円(同0.2%減)となりました。
その他
空港設備保守管理事業や不動産関連事業において取扱高が増加したこと等から、売上高・営業利益ともに前期を上回りました。
以上の結果、当期のその他の売上高は455億円(前期比10.4%増)、営業利益は11億円(同110.8%増)となりました。
財政状態
資産の部は、有価証券が増加したこと等により、前期末に比べて507億円増加し、3兆6,202億円となりました。
負債の部は、転換社債型新株予約権付社債の償還及び借入金の返済があったこと等により、前期末に比べて367億円減少し、2兆4,802億円となりました。なお、有利子負債(無利子のユーロ円建転換社債型新株予約権付社債を含む)は、前期末に比べて1,349億円減少し、1兆3,490億円となりました。
純資産の部は、配当金の支払いや繰延ヘッジ損益の減少があった一方で、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したこと等により、前期末に比べて874億円増加し、1兆1,400億円となりました。この結果、自己資本比率は31.2%となりました。
キャッシュ・フロー
営業活動においては、当期の税金等調整前当期純利益1,965億円に、減価償却費等の非資金項目、営業活動に係る債権・債務の加減算を行ったこと等から、3,730億円の収入となりました。
投資活動においては、有価証券の取得や設備投資による支出があったこと等から、3,436億円の支出となりました。これらの結果、フリー・キャッシュ・フローは293億円の収入となりました。
財務活動においては、社債の償還及び借入金の返済による支出があったこと等から、1,701億円の支出となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物は、前期末に比べて1,397億円減少し、8,627億円となりました。
連結業績予想などの将来予測情報
2026年3月期の連結業績の見通しは、売上高2兆3,700億円(前期比4.8%増)、営業利益1,850億円(同5.9%減)、経常利益1,750億円(同12.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,220億円(同20.3%減)を見込んでいます。なお、算出にあたり、米ドル円為替レートは150円、航空燃油費の一指標であるドバイ原油の市場価格を1バレルあたり75米ドル、シンガポール・ケロシンを1バレルあたり90米ドルとしています。
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